最近、AIを使ってコードを書く時間がずいぶん減った。実装を頼み、結果を検め、気になるところを直してもらう。その間に、別のタスクを進める。自分で手を動かす時間が減った代わりに、何を頼むかを考えたり、いくつもの作業の状況を把握したりする時間が増えた。
やっていることが、少しずつマネージャーに近づいている。そんな気がしていたところで、ふと疑問が湧いた。この管理する仕事も、いずれAIがやるようになるのではないか。
割り振る仕事も、AIが割り振る
複数のAIに仕事を割り振り、順番や依存関係を管理し、結果をまとめる。こうした制御は、オーケストレーションと呼ばれる。
たとえば、管理役のAIが、調査役のAIに情報収集を頼む。その結果を実装役のAIに渡し、実装が終われば別のAIにレビューさせる。問題があれば修正を依頼し、人間の判断が要るところでだけ相談してくる。この構成なら、人間がAIの一つひとつに指示を出して回る必要は減る。
僕がいまやっている「こっちの実装が終わったから確認しよう」「次はこの作業を頼もう」という仕事も、その一部は任せられるはずだ。むろん、何をもって成功とするかを決めたり、結果を確かめたりする仕事は残る。それでも、「AIを使う側に回れば、管理の仕事は人間に残る」とは限らないのである。
そして、AIが管理する相手が、別のAIだけにとどまる理由も見当たらない。人間の仕事の状況まで把握できるなら、チームの進行管理まで担うようになっても不思議ではない。
「進捗どうですか」の正体
仕事をしていると、状況を確かめるためのやり取りがしょっちゅう発生する。「進捗どうですか」「何か詰まっていますか」「いつごろ終わりそうですか」。聞かれた側は手を止めて説明し、聞いた側はそれを整理して、必要なら別の人に伝える。定例会議のために資料を作り、その資料をもとに上司がさらに上へ報告することもある。
こうしたやり取りが要るのは、仕事の情報が散らばっているからでもある。コードはGitHubに、相談はSlackに、仕様はドキュメントに、予定はカレンダーにある。さらに、本人の頭の中にしかない事情もある。
それらを拾い集めて、仕事全体の状況に変換する。マネージャーは、その役割も担っているわけだ。もしAIが必要な情報を集め、仕事どうしの関係を整理できるなら、人間が聞き回る場面は減るのかもしれない。
ただ、その話をするには、個人の作業を支えるAIと、組織全体を見渡すAIを分けて考える必要がある。
手元のAIと、雲の上のAI
対応するMacでは、すでにApple Intelligenceの端末内モデルが動いている。AIがOSに組み込まれること自体は、もう始まっているのだ。
その先に僕が想像しているのは、本人の作業のすぐそばにいるAIである。いまどの資料を開き、どのコードを直し、何をしようとしているのか。許可された範囲でその文脈を把握し、作業を手伝う。毎回ファイルを渡して背景を説明しなくても相談できるなら、AIに頼むまでの手間はぐっと減る。
一方で、個人のMacが状況を把握することと、会社全体の状況が分かることは別の話だ。チーム全体を見るには、共有されたコード、資料、会話、予定を扱う仕組みが要る。そこは、クラウド上のAIが担う構成が考えられる。
たとえば、ある人の「仕様の回答待ち」という情報と、別の人の「その回答には顧客への確認が必要」という情報をつなぐ。すると、「作業が止まっています」という報告が、「誰が何を確認すれば進むのか」という話に変わる。
もっとも、ローカルとクラウドで役割がきれいに分かれるわけではない。端末からクラウドのモデルを呼ぶこともあるし、会社の共有環境でモデルを動かすこともあるだろう。肝心なのは、AIがどこで動くかに加えて、どの情報を見られ、何を任されているかなのだ。個人を支えるAIと、共有情報から組織を見渡すAI。その間で必要な情報をやり取りできれば、個人の仕事とチーム全体の進行が結びつく。